[国際親善試合]U-23日本 2−0 U-23ウクライナ/3月25日/北九州スタジアム

 2022年3月にチームが立ち上がってから2年。大岩ジャパンは最後の仕上げに入っており、4月16日に初戦を迎えるパリ五輪のアジア最終予選(U-23アジアカップ)のメンバー選考は佳境を迎えている。そうした状況下で競争が激化しているポジションがGKだ。

 チーム発足当初からGKには逸材がずらり。U-17ワールドカップやU-20ワールドカップに飛び級で参戦し、東京五輪でもメンバー入りを果たした鈴木艶彩(シント=トロイデン)がトップランナーを走ってきた。最も早くA代表入りを果たしたのも鈴木で、22年のE-1選手権で初キャップを刻み、昨年10月からはA代表でレギュラーの座をガッチリ掴んでいる。

 ライバルとなる野澤大志ブランドン(FC東京)も右肩上がりで成長を続けて、今年1月にA代表の一員としてアジアカップを経験。藤田和輝(千葉)も昨年10月のアジア競技大会で評価を高め、11月のアルゼンチン戦に続いて、マリ、ウクライナとの2連戦が組まれた今回の3月シリーズでもメンバー入り。招集外となっているが佐々木雅士(柏)なども能力が高い。

 人材は充実している一方で、不安視もされている。鈴木が現状では4月のU-23アジア杯に招集できない可能性が高く、野澤も所属クラブで出場機会を失っている。そうした状況下で、ウクライナ戦で好パフォーマンスを見せたのが小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)だった。

 大岩ジャパンではコアメンバーの1人で、常に鈴木とポジションを競ってきた。最大の武器は193センチのサイズと手足の長さを活かしたセービング。柏U-18からベンフィカに加入してからはビルドアップにも磨きをかけ、スケールの大きなGKとして期待を集めている。
 
 しかし、今季は出場機会に恵まれておらず、最後に代表に呼ばれたのも昨年9月のU-23アジア杯予選。だからこそ、先発に抜擢されたウクライナ戦は、ラストチャンスという意気込みで臨んでいた。

「この半年間、僕は日本代表でプレーしたいと思っていた。それが自分の夢でもあったので」

 代表戦の出場は、昨年6月のイングランド戦以来。立ち上がりから落ち着いたプレーを披露し、スリッピーなーグラウンドにも対応した。19分には背後に蹴られたボールを冷静に処理。胸を使って収めて、その後にこぼれたボールをガッチリ掴んだ。

 試合を通じて大きなミスはなく、セービングもハイボール処理も安定しており、チームの無失点勝利に大きく貢献した。

【厳選ショット】後半に佐藤恵允・田中聡がゴール!無失点勝利でアジア最終予選へ!|国際親善試合 U-23日本 2−0 U-23ウクライナ
「久しぶりの90分ゲームで緊張していた部分もあったけど、無失点で追われたことはゴールキーパーにとってプラス。守備陣としてもチームとしても良かった。自分が試合に出たいという気持ちはあるけど、まずはチームが勝つことが大事。なので、そういう意味では良いアピールができたと思う」

 振り返れば、今季は苦難の連続だった。冬以降は怪我の影響もあり、先述したとおり、クラブで出番を失う。セカンドチームでもピッチに立てず、負傷から戻ってきても、それは変わらなかった。

 それでも、腐らずにGKコーチと鍛錬し、目の前のことに必死になって取り組んだ。ライバルである鈴木や野澤がA代表に招集されても動じない。焦らずに積み重ねてきたことが、最後の最後に発揮できた。
 
 U-23アジア杯でメンバー入りを果たせれば、正GKを任せられるパフォーマンスだったのは確かだ。「みんなで勝ちたい。100パーセント、自分がやったうえで監督が使うか使わないかを決める。そこは監督とチームをリスペクトして準備していきたい」とは小久保の言葉。

 普段は明るい性格でチームのムードメーカーを担うが、人知れず努力を重ねてきた男が、その実力をウクライナ戦で改めて証明した。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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